GM
さて、前例に倣うならここから自己紹介タイムなのですが。
GM
お二人共死ぬほどプロフ帳書いたし、いいかな。
リラ
死ぬほどプロフ帳書いてプロフ帳の救世主を死なせました
神崎 優
死ぬほどプロフ帳書いてリラさんに小学生を殺してもらいました
GM
というわけで始めていこうと思います。よろしくお願いします!
◆ プロローグ
GM
夜の闇の下を駆けるには、手元の頼りない灯りか、心の疵由来の超感覚が頼りとなるだろう。
GM
あなたたちの片方、ないしは両方は、裁判で手酷い傷を負っている。
GM
あなたたちは敗北し、走っている。
倒れ伏すことだけは避けられたものの、このままではその運命も近い。
GM
馬の蹄の音。 嘲笑う声。 頬のすぐ側を掠める火矢。
神崎 優
息を切らせて走る。
空気を吸い込む肺と喉以上に負った傷が痛む。
GM
まるで獲物をいたぶる肉食獣のように、狐狩りを楽しむ王族のように。
笑い声が響く。
リラ
まろぶように駆けながら、自分より少しばかり背の低い少年を案ずる。
GM
「男は殺せ! 女は殺すな! 非常食兼ペットになるからな!」
神崎 優
時折流れた血でむせる。
追っ手の姿を確認するよりも、声の主の様子を知るために何度か振り向く。
リラ
しかし不意にかすか遠く、耳慣れた音を捉えた。
神崎 優
追っ手の声と身を竦める姿に逡巡する。
このままでは―――殺される。
GM
追撃の手は止まない。 今生きているのは、遊ばれているから。
神崎 優
闇の中をどう走ったかも、どこにいけばいいかも、どうすればいいかもわからない。
神崎 優
足を止めた彼女に合わせて走るのをやめる。
神崎 優
反応もままならないまま抱きすくめられた。
神崎 優
リラさんの言葉の後に浮遊感と、重力に引かれ落ちる感覚。
リラ
細い身体を、それより尚細い身体で抱き留めたままに。
神崎 優
言われるがままに信じるように、縋るように細い体にしがみつく。
リラ
二人揃って海面へと叩きつけられ、大きな飛沫をあげる。
神崎 優
リラさんの匂い、腐った海の匂い、リラさんの体温、海の水温。
神崎 優
上も下もわからないままただその手にある体を抱きしめる。
GM
緑色のどろりとした汚水と激しい海流が、2人の体力を奪う。
リラ
荒れ狂う波に呑まれながら両腕でしかと優に応え、
GM
崖に取り残された救世主たちが、崖から下を見下ろす。
GM
夜の海に、もはやあなた達の姿を目視することはできない。
GM
「上がってくる死体を確認するまでは安心できねえ!
野郎ども、周囲の海岸をあたれ! そこに流れ着くはずだ!」
GM
「あんな楽に殺せる救世主、みすみす見逃してたまるかよ!」
GM
優は、知らない一室のベッドで目を覚まします。
神崎 優
目を覚ますと知らない天井を見上げている。
見慣れた自室や元の世界の病院ではないことは嫌でもわかった。
神崎 優
波の音。
自分の体が温かく、心臓が動いていることに遅れて安堵する。
GM
裁判で受けた怪我は、ささやかながら手当がされている。
神崎 優
体は痛むが動けないほどではない。
体幹時間としてついさっきまでの、死ぬかしれないという不安を感じない程度には。
神崎 優
整ったベッドの上で腕をかかえる。
堕落の国でこういう目に遇うのは何度目だったか。
神崎 優
その幾度か、いやほぼすべてをリラさんに助けられてきた。
そして今回も、手をひき自分を守るように海に飛び込んだ。
神崎 優
そんなにしてくれるんだろう、といつも思う。
GM
部屋にはもう一つベッドがある。 が、誰もいない。
神崎 優
疵の手当てをしたのも、ここまで運んでくれたのも、リラだと疑わない。
神崎 優
知らない声にベッドの上で後ずさる。
そんなことをしても無意味だとわかっていても、リラ以外の救世主とはいい思い出が何もない。
GM
問いに、また少しの間。 答えを考えているような。
GM
「とりあえず、ドアを開けてもいいでしょうか……?」
神崎 優
すぐに答えを返せない。
どうせ向こうが開けるつもりならなんと答えようと同じだ。
そもそもここで開けないでほしいといったところで何一つできることがない。
神崎 優
その問いかけに否定の言葉を返さないでいる。
それは開けても構わないということと同義だった。
カルセラ
言葉の通りに扉が開く。
そこにいたのは、20歳前後の女性。
カルセラ
「カルセラと申します。
怪我を負ったあなたを見つけたので、手当てさせて頂きました」
神崎 優
恐らくは救世主の、大人の女性。
自分に危害を加えてくる様子がないどころか、あいさつと説明をされてしまった。
カルセラ
あなたの様子を見て、必要以上に怯えさせないように距離を取っている。
カルセラ
「怪我の具合はいかがですか? 問題がないようでしたら、食事を──」
神崎 優
目を合わせないで手当ての礼を言う。
これくらいの距離があれば、自分の疵の力をつかえばなんとかできるかもしれないと思うことで気持ちを保つ。
神崎 優
食事、と言われると急に空腹感を感じる。
外は完全に明るくなっているから、あの夜より半日くらいは経っているだろうか。
神崎 優
「あ、あの……ほかに、一緒じゃありませんでしたか」
神崎 優
「ボクより少し背の高い、同じくらいの……女の子で」
カルセラ
「特に見かけませんでしたが……。
一度、あなたを見つけた場所に戻ってみましょうか」
神崎 優
見かけなかった、という言葉に身を固くする。
カルセラ
「あなたを見つけた時は、夜明け前でしたから……、見落としてしまったのかもしれません」
神崎 優
あれだけ強く抱きしめていても同じ場所にたどり着かなかった。
自分なんかより絶対に泳ぎの上手いはずのリラさんが。
カルセラ
返事は待たずに廊下を歩いて、建物の外へ。
神崎 優
その意味を悪い方へ悪い方へと考えてしまう。
神崎 優
リラさんが死んでボクだけ生き残ってしまったのかもしれない。
それとも、いい加減にボクのことが嫌いになったのかもしれない。
神崎 優
リラさんがいないことが不安で、苦しい。
それでいて、隣に居ないことにどこか安心感も覚えていた。
神崎 優
何を言ってもボクのことを心配して世話して手を引いてくれるリラさんは、頼りになって、でもなんでボクの傍にいるのか全然わからなかった。
神崎 優
聞いてみようにもあのキラキラした笑顔にごまかされるのはわかり切っていたし、答えを聞くのも何かを迫られるのも怖かった。
神崎 優
だから安心する。
そして同時に、ボクのことを助けてくれたリラさんが居なくなってしまったかもしれないことは辛くて、悲しい。
神崎 優
「…………」
握りこんだ手がじっとりと汗をかいている。
神崎 優
いつの間にか一人取り残されたベッドの上が急に不安になり、おっかなびっくり部屋の外へと出た。
カルセラ
「私では、あなたのお連れの顔はわかりません」
カルセラ
「探す気があるのなら、付いてきて頂かなければ」
カルセラ
そう言って、返事を待たずに、ふいと外に出る。
神崎 優
あちこちきょろきょろしながらカルセラの後ろをついていく。
GM
海の近くには、生命力に溢れ緑の葉を茂らせる樹や、下生えに包まれた地面。
神崎 優
夏を思い起こすような空気。
白い建物や波の音、青い海は旅行地のようだ。
GM
ただ空だけが、陰鬱な堕落の国の色をしている。
神崎 優
ボクが今まで見て来た堕落の国のどことも違う。
同じなのは曇天だけ。
GM
振り返ると、優とカルセラがいた建物は海を臨む教会のようだった。
カルセラ
カルセラは一度優を振り返り、さっさと先へ進む。
神崎 優
元の世界では全く馴染みのない建物だ。
そしてその感慨は、また待たせて怒られることに比べれば些細でどうでもいいことだった。
カルセラ
とはいえ、優より歩幅が広いわけではない。 追いつくのは難しくない。
神崎 優
カルセラの後をとぼとぼとついて歩く。
その間には連れとは言えない程度の距離を保っている。
駅の改札なら横から人が入ってくるだろう。
カルセラ
足音がついてくるようなら、特に何か言う様子はない。
カルセラ
岩場や大きな椰子の木などをいくつか通り過ぎて、立ち止まる。
カルセラ
岩が入り組んでいて、たしかにあまり見晴らしは良くない。
神崎 優
そう言われて地面を這っていた視線をあげる。
カルセラ
「このあたりは、潮の流れのせいでよくものが流れ着くんですよ」
カルセラ
大きな岩の影をひょいと覗いて、また少し離れた岩の影へと。
神崎 優
入り組んだ岩は浜ではなく磯というような、もっと整備されていない寂れた岩場。
神崎 優
ここに流れ着いた、と言われてよく生きていたなとすら思う。
神崎 優
おっかなびっくり後を追う。
確かに、誰か何かを探す目的でもなければ、この岩場の向こうまで見に行こうなど、ボクなら絶対思わない。
カルセラ
足元のよくない岩場を、それでも慣れた様子で歩く。
神崎 優
「こ、こ、ってどれぐらい広いん、ですか」
カルセラ
「私とあなたで、知っている単位が同じかどうか……」
神崎 優
時折息を飲む。
見たくないものが見えてしまうかもしれない、という緊張感を勝手に感じている。
神崎 優
「う……ん、カルセラさんが、島を一周するなら、どれくらいかかりますか」
神崎 優
今のボクにとってはため息が出そうなほど大きい。
リラ
血に汚れた手のひらが力なく投げ出されている。
リラ
崖に飛び込んだ時と同じ、或いはそれ以上に傷だらけの姿。
神崎 優
覗いた岩場から動き出せずにいる。
心臓が早打ち、じわりと汗が噴き出す。
神崎 優
カルセラの言葉を聞いてもおさまることはなく、目の前に傷ついて横たわるリラを見つめている。
神崎 優
つっかえながら絞り出す。
波間に揺れるその肢体はまるで死んでいるかのようで、ぐちゃぐちゃに混ざり合った感情がボクのなかで暴れている。
リラ
汚れ、破られ、水を含んだ衣装がその線をいつも以上に浮き上がらせる。
神崎 優
昨日の夜の傷だけではない、まるで男に乱暴に扱われたような姿を直視しがたかった。
リラ
攻撃を受けるのはいつもリラの役目。
攻撃をするのも、いつもリラの役目。
リラ
必然、リラの方が狙われる。
リラの方が傷を負う。いつものことだ。
神崎 優
ボクを守ろうとするから、ボクを助けようとするから。
ボクを連れて行こうとするから、ボクを拾ったりなんかするから。
神崎 優
でもボクは弱くて、死にたくなくて、リラさんがそれでいいならボクにも都合が良くて。
神崎 優
だからこうなってるのも、いつものことで。
神崎 優
リラさんがこうやって傷つくのも、こうなってるのはボクのせいだって言われてるように感じるのも嫌だ。
カルセラ
水に濡れた少女の体を引き上げる。
まるで水死体のように、どこにも力の入っていない体を。
リラ
カルセラの腕へ、ぐったりとその細身が収まる。
神崎 優
告げられる事実に反応を返せない。
ここでなにをしてでも助けてくださいと意思を見せることも、泣いて縋りつくこともできない
カルセラ
「この怪我で、一晩冷たい海岸に放置されていたのです。
普通は助かりません」
神崎 優
どうしたらいいんだろう。どうしよう。
決めてくれたリラさんは今そこで横たわっている。
神崎 優
「……でも、手当てを、してください……」
神崎 優
およそ状況に似つかわしくない言葉と行動に、つられて空を見上げる。
GM
淀んだ空、丘の向こうから、何か巨大なものが飛来してくるのが見えます。
GM
それは竜などと呼ばれるものに似た怪物でした。
GM
救世主達から数十メートルほど離れた位置に、地響きを立てて着陸します。
神崎 優
おもわず身構える。
ファンタジー小説に出てくるような、ドラゴンというのがしっくりくる姿。
もしくは、ハントされるモンスターのような巨大な翼のあるトカゲ。
GM
カルセラの言葉通り、ドラゴンに救世主達を襲う気配はありません。
GM
意識を失ったリラを見つけると、のそのそと近づいて来ます。
神崎 優
そうは言われても、カルセラの表情はわからないしドラゴンなんてなおさらだ。
神崎 優
ボクが何かできるわけもなく、ただその巨体を見上げるばかり。
暴れるわけでもないが、さりとておとぎ話のように言葉を発するわけでもないのがむしろ怖い。
GM
ドラゴンは、生気を失った少女に首を向けて──
GM
不思議なことに、リラの頬に血色が戻ってゆく。
GM
リラの近くに生えていた、しなびた雑草までしゃっきりとしてきました。
神崎 優
ブレスのかかった周辺だけ、周りの植物を見るだけでも生気が溢れるように見ちがえている。
リラ
苦しげな呼吸は穏やかなそれに戻り、胸が静かに上下する。
GM
今度は、生気を失って萎びた椰子の木へブレスを吐きかける。
神崎 優
リラさんも当然、痛ましい姿ではなく見慣れたいつもの寝顔になっている。
それでも、いくら堕落の国とはいえ目の前で起きている出来事についていくのが精いっぱいだ。
リラ
自分の周囲で行われる奇跡に気付く気配もなく、すやすやと眠っている。
神崎 優
リラとカルセラと、緑のドラゴンに何度も目を移している。
GM
ドラゴンは、何度か同じようなことを繰り返しています。
神崎 優
カルセラとドラゴンの間あたりに礼を投げかける。
カルセラ
「私は何も……。
それより、彼女を運ぶのを手伝って頂けませんか?」
神崎 優
そう言われて返事をしたものの、手をわや、と出してみては引っ込める。
神崎 優
運んだことがない。運び方が全然わからない
神崎 優
すぐに思いついたのは、お姫様だっこみたいに抱える方法だったけど
ボクにされたくないだろうし、なにより一人で運ぶわけではない。
カルセラ
慣れていなさそうな優の様子を見て、リラの上半身を抱える。
神崎 優
おっかなびっくり足を持つ。
足首あたりでいいんだろうかと力をこめる。
神崎 優
えっちらおっちら、どう考えても疵の力で一人で運べるはずのリラさんを、あったばかりのカルセラさんと運んでいる。
GM
ドラゴンは満足したのか、その場から飛び去っていきました。
カルセラ
「そういえば、名前を聞いていませんでしたね」
神崎 優
「……神崎、優(かんざき すぐる)です」
神崎 優
「………」
カルセラの方をまっすぐ見ないで答える。
リラ
身体の両端を二人に支えられた姿勢のまま、ゆっくりと瞼を上げます。
リラ
頭側をカルセラに、脚側を優に支えられている形ですから……
リラ
今は怪我一つないその姿を認めて、ふわりと笑う。
神崎 優
リラのお腹の右側の、地面あたりを見つめながら運んでいた。
神崎 優
名前を呼ばれ、一瞬目をリラの顔へと向ける。
いつもの笑顔がそこにあった。
神崎 優
すぐに視線が外れる。
何を言えばいいかわからず、いつもの朝の挨拶を口にする。
リラ
暴れるわけにもいかず……大人しく降ろされ……
カルセラ
優がリラの足を下ろすと、そっと上半身を離した。
リラ
砂浜に腰を下ろしてから、ひょいと立ち上がります。
リラ
でも、優くんにその手の力のないことは知っているので……
リラ
「……あなたが、助けてくだすったんですか?」
神崎 優
説明の間、さりげなくリラの後ろ側に立っている。
GM
少し離れたところでドラゴンがのしのし歩いていたので、その件についても話しました。
GM
ブレスを吐いて、植物を生やしたりしています。
リラ
あ、だからこのあたりの海はきれいなのかな……?
リラ
「その、ありがとうございます。カルセラさん」
リラ
「救世主さん……なんでしょう? それなのに、助けていただいて……」
リラ
普通に考えたら……絶対期限延ばすために使われてるし……
リラ
っていうか……私達もボロボロの救世主見つけたらそうするし……
リラ
まだ余裕があっても、その余裕を少しでも延ばすに越したことはないと。
カルセラ
「ご存知ですか?
この海岸に伝わるおとぎ話を」
リラ
ちらと優を見ますが、知らない同士ですね。まあまあ当然のことですが。
カルセラ
「霞の向こうから船が現れて、救世主を堕落の国から元の世界へと送り届けてくれる、んですって」
カルセラ
「噂を聞きつけて、救世主達がこの海岸を訪れるんです」
神崎 優
噂でしかない。
この世界で、そんな噂、本当のはずがない。
そんな思いと、こんな世界だからこそ、という思いが渦巻く。
カルセラ
「どういうことも何も、そういうおとぎ話があるだけですよ」
神崎 優
「……で、も、カルセラさんがここにいるなら……」
神崎 優
その噂が本当かどうかは確かめられるはずで。
リラ
「……実際に、救世主が帰るところを見たことがある……」
カルセラ
「ええ、私は一度も見たことはありません」
神崎 優
降ってわいたおとぎ話のような噂に、いつもらしからぬ反応をしてしまった。
そして、それはあくまで噂であるという情報に、落胆していた。
神崎 優
その視線は、ほんの一瞬でもリラではなくカルセラを見ている。
カルセラ
「どちらにしても、しばらくはここにいた方がいいと思いますよ」
GM
ちょうどドラゴンが飛び去って、わずかばかり砂が舞う。
カルセラ
「ここは、あの亡者『ワンダーバッフェ』に支配されている領域です」
カルセラ
「海岸から出ようとしたり、逆に海岸に近付こうとすると、ワンダーバッフェが襲いかかってくるんですよ」
カルセラ
「あなた達は、海を漂流してきたので見逃されたみたいですが」
カルセラ
「自由はありませんが、悪いものではありませんよ」
神崎 優
傷を治したり、植物を生やしたりなんてことを?
亡者のドラゴンが?なんのために?
神崎 優
わかるはずのない疑問を頭の中で呟いては消していく。
リラ
「噂を聞きつけて訪れた救世主と、裁判をして……?」
カルセラ
救世主が領域に侵入しようとすると、ワンダーバッフェが倒してくれるので、その裁判に居合わせれば責務は果たせるので楽。
カルセラ
他の亡者もワンダーバッフェが追い払ってくれるし、食べ物も豊富です。
神崎 優
「で、でも、じゃあなんでそんな、ここから元の世界に帰れるなんて噂が……」
神崎 優
そう、わかるわけがない。
わからないからこそ、噂がもしかすると本当かもしれないとすら思える。
神崎 優
「で、も、じゃあ、そうですよね……でもだから、噂も本当かもしれない」
カルセラ
「ここに留まるにしても、出ていくにしても、もう少し休んだほうがいいでしょう」
カルセラ
「大きな怪我は治っていますが、体力や失った血までは戻りませんからね」
リラ
カルセラへと頭を下げます。優の方を気にかけながら。
神崎 優
そう、出ていくにしても、噂を確かめるにしても。
体力を取り戻す必要がある。
神崎 優
ぶつぶつとなにか考え事をしているようで、リラが頭を下げているのを見て、あわせてて頭をさげた。
カルセラ
「いえ、私も久しぶりに人と会話ができて、嬉しく思っています」
GM
というわけで、大体お茶会2Rの間くらいは休息する必要がありそうです。
◆ クエスト:果実の収穫
条件:ワンダーバッフェの疵を抉る判定でのみ挑戦可能。
概要:ワンダーバッフェのブレスからは果実が生まれる。その出来たての果実にはことさらに滋養が詰まっている。手に入れることができれば裁判で有利となるだろう。
目標値:9
消滅条件:2回挑戦するか、お茶会終了と同時に消滅。
成功:挑戦したPCは果実を得る。「とうみつ」相当の効果を持つ。
失敗:同様に「とうみつ」を得られるが、ブレスを浴びてしまう。挑戦したPCは開廷時にランダムな不調(2ラウンド継続)を受ける。
放置:何も起こらない。
GM
というわけで、教会に帰ってくると、カルセラが食事を用意してくれました。
GM
鸚鵡の卵のオムレツ。海ぶどうのスパゲッティ。椰子の実ジュース。
リラ
堕落の国で他人の、しかも救世主の善意を受けることは極稀。
リラ
を、通り越して、少なくとも二人で旅をするようになってからは皆無であった。
神崎 優
いつもの食事に比べるとあまりにも豪華で、元の世界の食事と比べるとどうしても大人しい食事。
リラ
明らかに世慣れていない、か弱げな少年少女の救世主が二人ともなれば、まずは食い物にされるというのがセオリーで……
リラ
本当だったら裏を疑うところなのだけれど、
そもそもカルセラに下心があるのなら既に自分たちは生きていない。
リラ
ので、カルセラのことは信じていい、とは思っていますが……
神崎 優
そんな二人はあちこちで苦労し、生き延び、そしてここに流れ着いた。
神崎 優
だからこそ、いつもに比べて格段に上等な食事は本来心躍るはずのもの。
助けてくれたカルセラさんも、こうして食事を振舞ってくれるほどだし……。
神崎 優
なにより、堕落の国のどこよりも、少なくとも二人で見てきたどこよりも安定した環境。
神崎 優
そんなところについたはずなのに、食事の雰囲気は重い。
リラ
いつもの食事とは比べ物にならないほどの味に、しかし舌鼓を打つ心の余裕もなく。
カルセラ
言葉通り、重苦しい雰囲気を気にしていない様子で食事を進める。
カルセラ
「どういたしまして。 喜んでくださって嬉しいです」
リラ
心に重苦しいものを抱えながら、それでも顔には笑みを浮かべる。
神崎 優
時折ちらり、と会話を交わすリラとカルセラに視線をむける。
神崎 優
食事の席であまり感想を言わないのはいつものことだが、それでも輪をかけて、というか、あまり意識が食事に向いていない。
リラ
優が二人に視線を向けるのと同じように、リラも優の様子を窺う。
リラ
ただ気が塞いでいるだけなら、軽く声でもかけてみるところだが……。
神崎 優
うん、だのはい、だの。短い返答を挟みながら食べすすめていく。
リラ
今はその理由も、その心中も、少なからず察しがつく。
リラ
ただ場を明るくするだけで解決するものではないと、理解できてしまう。
神崎 優
神崎優の心は今完全に元の世界へ帰れるという噂の方を向いている。
リラ
知っている。何度も聞いてきた。元の世界へと帰りたいと、そのように零す声を。
神崎 優
思い出してしまった元の世界の、現代日本の食事をおもえば、どれほど豪華で上等な食事でも味気ない。
リラ
優がどれほどに自分の元いた世界に焦がれ続けているものか。
神崎 優
過酷で苦しい、血と砂埃にまみれたこの世界から帰れるかもしれない。
リラ
共に旅をし、共に死線を潜り抜ける最中で、痛いほどに知らされてきたのだ。
神崎 優
そのてがかりがもしかしたらあるかもしれない。
そんな些細なきっかけだけで充分だった。
リラ
その痛みは、優を庇うて敵の攻撃を受けるあの痛みとは比べ物にならず。
GM
優やリラが知っているかはさておき。
救世主が、堕落の国から元の世界に戻れる方法には様々な噂がある。
GM
棚井戸を最上階まで登れば、とか
嵐の日にさる山の頂上に行けば、とか
王立裁判所にそういう秘宝がある、とか。
神崎 優
霧の向こうから訪れる船に乗り込む。
ただそれだけ。
噂が本当なら、たったそれだけで。
リラ
それだけで、優は元の世界に帰ることができる。
リラ
黙々と食べていたぶん、優の方が完食が早かった。
リラ
慌てて……ではありつつも、失礼にならない程度に食事のスピードを早めます。
神崎 優
自分の食器をまとめて台所へと運ぶ。
そんな行為にすら自宅のことを思い出している。
リラ
もくもくと食べます……おいしい……おいしいけど味わってる余裕は……今はあるのかもしれないけれど……。
神崎 優
別に家事を積極的にするわけでもなく、出された食事を食べて、せいぜい食器を運んだり、掃除をしたり洗濯をしたり。
自分からするでもなく、言われたら手伝う程度。
リラ
「優くん、私も手伝いますよ」食器を運んで台所へと。
リラ
これは、元の世界でついた習慣ではなく。
この世界で身につけた生活の仕草。
リラ
この堕落の国で生きていくための術を身に着け、そのように振る舞っている。
神崎 優
それでも、リラのことを邪険にすることも無視することもしない。
できない。
自分から進んでそうすると決めることもできない。