GM
さて、前例に倣うならここから自己紹介タイムなのですが。
GM
お二人共死ぬほどプロフ帳書いたし、いいかな。
リラ
死ぬほどプロフ帳書いてプロフ帳の救世主を死なせました
GM
女子小学生を手にかけていた
神崎 優
死ぬほどプロフ帳書いてリラさんに小学生を殺してもらいました
GM
心の疵の話とかもしたしねっ
リラ
えーんえーんあーん
GM
というわけで始めていこうと思います。よろしくお願いします!
神崎 優
よろしくお願いします!
リラ
よろしくおねがいします・・・


GM
Dead or AliCe

     『宝島』


◆ プロローグ

GM
あなたたちは走っている。
GM
月の光すらも、雲に遮られる堕落の国では
GM
夜の闇の下を駆けるには、手元の頼りない灯りか、心の疵由来の超感覚が頼りとなるだろう。
GM
あなたたちの片方、ないしは両方は、裁判で手酷い傷を負っている。
GM
あなたたちは敗北し、走っている。
倒れ伏すことだけは避けられたものの、このままではその運命も近い。
GM
背後には救世主と配下の一団。
GM
馬の蹄の音。 嘲笑う声。 頬のすぐ側を掠める火矢。
リラ
「っ!」
リラ
その一矢に怯えるように眉を寄せ、
GM
格上の救世主だった。 残虐な救世主だった。
リラ
しかし先行する影へと叫ぶ。
リラ
「優くん、……っ」
神崎 優
息を切らせて走る。
空気を吸い込む肺と喉以上に負った傷が痛む。
リラ
「まだ、走れますかっ」
リラ
こちらも満身創痍。
神崎 優
「まだ、だいじょう、ぶ」
GM
まるで獲物をいたぶる肉食獣のように、狐狩りを楽しむ王族のように。
笑い声が響く。
リラ
まろぶように駆けながら、自分より少しばかり背の低い少年を案ずる。
GM
「男は殺せ! 女は殺すな! 非常食兼ペットになるからな!」
GM
下卑た笑い。
リラ
びく、と身をすくめる。
神崎 優
時折流れた血でむせる。
追っ手の姿を確認するよりも、声の主の様子を知るために何度か振り向く。
リラ
下卑た声に怯え、追い立てる影を恐れながら、
リラ
しかし不意にかすか遠く、耳慣れた音を捉えた。
神崎 優
追っ手の声と身を竦める姿に逡巡する。
このままでは―――殺される。
GM
追撃の手は止まない。 今生きているのは、遊ばれているから。
リラ
追い詰められている。追い立てられている。
リラ
――どこに?
神崎 優
闇の中をどう走ったかも、どこにいけばいいかも、どうすればいいかもわからない。
GM
靴は岩を叩く、硬い音を響かせる。
GM
そう、岩。 ここは岩場だ。
GM
そして、それは突然途絶える。
GM
切り立った崖。
神崎 優
怯え、頼るような視線をリラへ向けた。
リラ
これ以上は行く先のない断崖絶壁。
リラ
その遥か下より、
リラ
故郷によく似た波の音がする。
リラ
「…………っ」
リラ
足を止めた。
GM
残された選択肢は少ない。
リラ
怒号は今も二人へと迫る。
神崎 優
「リ、ラさん?」
リラ
「……優くん」
GM
「いたぞ!」
リラ
手を取った。
神崎 優
足を止めた彼女に合わせて走るのをやめる。
神崎 優
そのまま手を引かれる。
リラ
腕を取り、身を引き寄せて、
リラ
瞼に唇を落とす。
神崎 優
「―――っ、う」
GM
声は近づいてくる。
神崎 優
反応もままならないまま抱きすくめられた。
リラ
祈りを込めた一瞬に、
リラ
「私を、信じて」
リラ
その体ごとに、強く強く。
リラ
地を蹴った。
GM
「なっ!?」
GM
海とあなた達を阻むものはなにもなく。
リラ
一瞬の浮遊感。
GM
「馬鹿なっ!?」
リラ
それから自由落下。
神崎 優
リラさんの言葉の後に浮遊感と、重力に引かれ落ちる感覚。
リラ
細い身体を、それより尚細い身体で抱き留めたままに。
神崎 優
言われるがままに信じるように、縋るように細い体にしがみつく。
リラ
二人揃って海面へと叩きつけられ、大きな飛沫をあげる。
GM
堕落の海は腐り、濁っている。
リラ
故郷とは似ても似つかぬ汚濁の海。
神崎 優
リラさんの匂い、腐った海の匂い、リラさんの体温、海の水温。
神崎 優
上も下もわからないままただその手にある体を抱きしめる。
GM
緑色のどろりとした汚水と激しい海流が、2人の体力を奪う。
リラ
荒れ狂う波に呑まれながら両腕でしかと優に応え、
リラ
ひとときだけ、疵の力を緩めた。
GM
GM
崖に取り残された救世主たちが、崖から下を見下ろす。
GM
夜の海に、もはやあなた達の姿を目視することはできない。
GM
「ちっ、この高さでは、助かるまい……」
GM
「な~んてな」
GM
「上がってくる死体を確認するまでは安心できねえ!
 野郎ども、周囲の海岸をあたれ! そこに流れ着くはずだ!」
GM
「あんな楽に殺せる救世主、みすみす見逃してたまるかよ!」
GM
「……ん?」
GM
「なんだ……あれは……」
GM
「うわああああああああッ!!!!」
GM
GM
どれくらいの間意識を失っていたのか。
GM
優は、知らない一室のベッドで目を覚まします。
神崎 優
「……………」
GM
華美ではないけれど、清潔なベッド。
神崎 優
目を覚ますと知らない天井を見上げている。
見慣れた自室や元の世界の病院ではないことは嫌でもわかった。
GM
どこかから、波の音が聞こえる。
神崎 優
波の音。
自分の体が温かく、心臓が動いていることに遅れて安堵する。
GM
裁判で受けた怪我は、ささやかながら手当がされている。
GM
部屋には、優一人だけが寝かされている。
神崎 優
体は痛むが動けないほどではない。
体幹時間としてついさっきまでの、死ぬかしれないという不安を感じない程度には。
神崎 優
「……………」
大きくため息をついた。
神崎 優
「死ななかった……殺されなかった……」
神崎 優
整ったベッドの上で腕をかかえる。
堕落の国でこういう目に遇うのは何度目だったか。
神崎 優
その幾度か、いやほぼすべてをリラさんに助けられてきた。
そして今回も、手をひき自分を守るように海に飛び込んだ。
神崎 優
「………なんで」
神崎 優
そんなにしてくれるんだろう、といつも思う。
神崎 優
「そ、うだ……リラさん………」
神崎 優
「……いる、かな。居るよね」
GM
部屋にはもう一つベッドがある。 が、誰もいない。
GM
ノック音。
神崎 優
突然の音にびくりととびあがる。
神崎 優
「リラさん……?」
神崎 優
疵の手当てをしたのも、ここまで運んでくれたのも、リラだと疑わない。
GM
返事に、少し考えるような間。
GM
「お目覚めでしょうか……?」
GM
リラとは違う、女性の声。
神崎 優
知らない声にベッドの上で後ずさる。
そんなことをしても無意味だとわかっていても、リラ以外の救世主とはいい思い出が何もない。
神崎 優
「だ、誰です、か」
GM
問いに、また少しの間。 答えを考えているような。
GM
「とりあえず、ドアを開けてもいいでしょうか……?」
神崎 優
逡巡。
神崎 優
すぐに答えを返せない。
どうせ向こうが開けるつもりならなんと答えようと同じだ。
そもそもここで開けないでほしいといったところで何一つできることがない。
神崎 優
その問いかけに否定の言葉を返さないでいる。
それは開けても構わないということと同義だった。
GM
「開けますよ」
神崎 優
「………」
カルセラ
言葉の通りに扉が開く。
そこにいたのは、20歳前後の女性。
カルセラ
末裔の特徴はない。
おそらくは救世主。
カルセラ
扉を開いたが、中には入らずに軽く一礼。
カルセラ
「カルセラと申します。
 怪我を負ったあなたを見つけたので、手当てさせて頂きました」
神崎 優
「う……」
神崎 優
恐らくは救世主の、大人の女性。
自分に危害を加えてくる様子がないどころか、あいさつと説明をされてしまった。
カルセラ
あなたの様子を見て、必要以上に怯えさせないように距離を取っている。
神崎 優
「あ……ありがとう、ござい、ます」
カルセラ
「いえ……」
カルセラ
「怪我の具合はいかがですか? 問題がないようでしたら、食事を──」
神崎 優
目を合わせないで手当ての礼を言う。
これくらいの距離があれば、自分の疵の力をつかえばなんとかできるかもしれないと思うことで気持ちを保つ。
神崎 優
食事、と言われると急に空腹感を感じる。
外は完全に明るくなっているから、あの夜より半日くらいは経っているだろうか。
神崎 優
「あ、あの……ほかに、一緒じゃありませんでしたか」
カルセラ
「他に、というと、同行者が?」
神崎 優
「ボクより少し背の高い、同じくらいの……女の子で」
カルセラ
「特に見かけませんでしたが……。
 一度、あなたを見つけた場所に戻ってみましょうか」
カルセラ
そう言って、静かに先導する。
神崎 優
見かけなかった、という言葉に身を固くする。
カルセラ
「あなたを見つけた時は、夜明け前でしたから……、見落としてしまったのかもしれません」
神崎 優
あれだけ強く抱きしめていても同じ場所にたどり着かなかった。
自分なんかより絶対に泳ぎの上手いはずのリラさんが。
カルセラ
返事は待たずに廊下を歩いて、建物の外へ。
神崎 優
その意味を悪い方へ悪い方へと考えてしまう。
神崎 優
リラさんが死んでボクだけ生き残ってしまったのかもしれない。
それとも、いい加減にボクのことが嫌いになったのかもしれない。
神崎 優
リラさんがいないことが不安で、苦しい。
それでいて、隣に居ないことにどこか安心感も覚えていた。
神崎 優
何を言ってもボクのことを心配して世話して手を引いてくれるリラさんは、頼りになって、でもなんでボクの傍にいるのか全然わからなかった。
神崎 優
聞いてみようにもあのキラキラした笑顔にごまかされるのはわかり切っていたし、答えを聞くのも何かを迫られるのも怖かった。
神崎 優
だから安心する。
そして同時に、ボクのことを助けてくれたリラさんが居なくなってしまったかもしれないことは辛くて、悲しい。
神崎 優
「…………」
握りこんだ手がじっとりと汗をかいている。
神崎 優
いつの間にか一人取り残されたベッドの上が急に不安になり、おっかなびっくり部屋の外へと出た。
カルセラ
カルセラは、優を待っていた。
カルセラ
「私では、あなたのお連れの顔はわかりません」
カルセラ
「探す気があるのなら、付いてきて頂かなければ」
神崎 優
「……はい。ごめんなさい」
神崎 優
気圧されてすぐに謝ってしまう。
カルセラ
「別に怒っている訳ではありませんよ」
カルセラ
そう言って、返事を待たずに、ふいと外に出る。
神崎 優
あちこちきょろきょろしながらカルセラの後ろをついていく。
GM
建物の外に出ると、むっと植物の匂い。
GM
眼前には青い海が広がる。
GM
海の近くには、生命力に溢れ緑の葉を茂らせる樹や、下生えに包まれた地面。
神崎 優
夏を思い起こすような空気。
白い建物や波の音、青い海は旅行地のようだ。
GM
ただ空だけが、陰鬱な堕落の国の色をしている。
神崎 優
ボクが今まで見て来た堕落の国のどことも違う。
同じなのは曇天だけ。
GM
振り返ると、優とカルセラがいた建物は海を臨む教会のようだった。
カルセラ
カルセラは一度優を振り返り、さっさと先へ進む。
神崎 優
元の世界では全く馴染みのない建物だ。
そしてその感慨は、また待たせて怒られることに比べれば些細でどうでもいいことだった。
カルセラ
とはいえ、優より歩幅が広いわけではない。 追いつくのは難しくない。
カルセラ
さくさくと、砂を踏む音が響く。
神崎 優
カルセラの後をとぼとぼとついて歩く。
その間には連れとは言えない程度の距離を保っている。
駅の改札なら横から人が入ってくるだろう。
カルセラ
足音がついてくるようなら、特に何か言う様子はない。
カルセラ
岩場や大きな椰子の木などをいくつか通り過ぎて、立ち止まる。
カルセラ
「あなたを見つけたのはこのあたりです」
カルセラ
岩が入り組んでいて、たしかにあまり見晴らしは良くない。
神崎 優
そう言われて地面を這っていた視線をあげる。
カルセラ
「このあたりは、潮の流れのせいでよくものが流れ着くんですよ」
カルセラ
大きな岩の影をひょいと覗いて、また少し離れた岩の影へと。
神崎 優
入り組んだ岩は浜ではなく磯というような、もっと整備されていない寂れた岩場。
神崎 優
ここに流れ着いた、と言われてよく生きていたなとすら思う。
神崎 優
おっかなびっくり後を追う。
確かに、誰か何かを探す目的でもなければ、この岩場の向こうまで見に行こうなど、ボクなら絶対思わない。
カルセラ
足元のよくない岩場を、それでも慣れた様子で歩く。
神崎 優
「こ、こ、ってどれぐらい広いん、ですか」
カルセラ
「どれくらいと言われましても」
カルセラ
「私とあなたで、知っている単位が同じかどうか……」
神崎 優
時折息を飲む。
見たくないものが見えてしまうかもしれない、という緊張感を勝手に感じている。
神崎 優
「う……ん、カルセラさんが、島を一周するなら、どれくらいかかりますか」
カルセラ
「一日もあれば」
神崎 優
今のボクにとってはため息が出そうなほど大きい。
神崎 優
「……ありがとう、ございます」
カルセラ
急に立ち止まる。
カルセラ
「もしかして、こちらの方ですか?」
カルセラ
岩場の影を示す。
神崎 優
カルセラの言葉に一瞬身がすくむ。
神崎 優
それでも示された岩の影をのぞき込んだ。
リラ
血に汚れた手のひらが力なく投げ出されている。
神崎 優
「―――っ」
神崎 優
息を飲む。
カルセラ
しゃがんで、口元に手を当てる。
カルセラ
「息はあるようです」
リラ
崖に飛び込んだ時と同じ、或いはそれ以上に傷だらけの姿。
神崎 優
覗いた岩場から動き出せずにいる。
心臓が早打ち、じわりと汗が噴き出す。
神崎 優
カルセラの言葉を聞いてもおさまることはなく、目の前に傷ついて横たわるリラを見つめている。
リラ
長い髪が寄せては返す波に遊ばれている。
神崎 優
「そ、うです。この人です」
神崎 優
つっかえながら絞り出す。
波間に揺れるその肢体はまるで死んでいるかのようで、ぐちゃぐちゃに混ざり合った感情がボクのなかで暴れている。
リラ
まだ成熟する前の少女の華奢な身体。
リラ
汚れ、破られ、水を含んだ衣装がその線をいつも以上に浮き上がらせる。
カルセラ
「あなたよりも、怪我が酷いですね」
神崎 優
昨日の夜の傷だけではない、まるで男に乱暴に扱われたような姿を直視しがたかった。
リラ
攻撃を受けるのはいつもリラの役目。
攻撃をするのも、いつもリラの役目。
リラ
必然、リラの方が狙われる。
リラの方が傷を負う。いつものことだ。
リラ
それが、いつもより幾らか過剰なだけ。
神崎 優
ボクを守ろうとするから、ボクを助けようとするから。
ボクを連れて行こうとするから、ボクを拾ったりなんかするから。
神崎 優
でもボクは弱くて、死にたくなくて、リラさんがそれでいいならボクにも都合が良くて。
神崎 優
だからこうなってるのも、いつものことで。
神崎 優
でもこういう姿は見たくない。
神崎 優
リラさんがこうやって傷つくのも、こうなってるのはボクのせいだって言われてるように感じるのも嫌だ。
カルセラ
水に濡れた少女の体を引き上げる。
まるで水死体のように、どこにも力の入っていない体を。
神崎 優
「て、手当てを、助かります、よね」
リラ
カルセラの腕へ、ぐったりとその細身が収まる。
カルセラ
「このままでは、危ないでしょうね」
神崎 優
告げられる事実に反応を返せない。
ここでなにをしてでも助けてくださいと意思を見せることも、泣いて縋りつくこともできない
カルセラ
「この怪我で、一晩冷たい海岸に放置されていたのです。
 普通は助かりません」
神崎 優
「う……じゃあ……」
神崎 優
どうしたらいいんだろう。どうしよう。
決めてくれたリラさんは今そこで横たわっている。
神崎 優
「……でも、手当てを、してください……」
カルセラ
「大丈夫ですよ」
カルセラ
「そろそろ時間ですから」
カルセラ
そう言って、空を仰ぐ。
神崎 優
「時間……?」
神崎 優
およそ状況に似つかわしくない言葉と行動に、つられて空を見上げる。
リラ
カルセラの腕の中、意識のないままに。
GM
すると……
GM
淀んだ空、丘の向こうから、何か巨大なものが飛来してくるのが見えます。
GM
翠色の巨体。大きな翼。
GM
鋭い爪と牙。
神崎 優
「………っ!」
GM
それは竜などと呼ばれるものに似た怪物でした。
GM
救世主達から数十メートルほど離れた位置に、地響きを立てて着陸します。
リラ
振動に身を揺らされ、わずかにうめく。
神崎 優
おもわず身構える。
ファンタジー小説に出てくるような、ドラゴンというのがしっくりくる姿。
もしくは、ハントされるモンスターのような巨大な翼のあるトカゲ。
神崎 優
「あ、あの、これって……」
カルセラ
「大丈夫ですよ」
GM
カルセラの言葉通り、ドラゴンに救世主達を襲う気配はありません。
GM
意識を失ったリラを見つけると、のそのそと近づいて来ます。
神崎 優
そうは言われても、カルセラの表情はわからないしドラゴンなんてなおさらだ。
リラ
力なくカルセラの腕に収まっている。
神崎 優
ボクが何かできるわけもなく、ただその巨体を見上げるばかり。
暴れるわけでもないが、さりとておとぎ話のように言葉を発するわけでもないのがむしろ怖い。
GM
ドラゴンは、生気を失った少女に首を向けて──
GM
翠色のブレスを吐きかけた。
神崎 優
「―――えっ!?」
GM
すると……
GM
不思議なことに、リラの頬に血色が戻ってゆく。
GM
傷が塞がり、痣が消える。
GM
リラの近くに生えていた、しなびた雑草までしゃっきりとしてきました。
リラ
血に汚れた頬も、今やもとのばら色に。
神崎 優
ブレスのかかった周辺だけ、周りの植物を見るだけでも生気が溢れるように見ちがえている。
リラ
苦しげな呼吸は穏やかなそれに戻り、胸が静かに上下する。
GM
満足したのか、そのままリラから離れる。
GM
今度は、生気を失って萎びた椰子の木へブレスを吐きかける。
GM
椰子の木も、見る間に生気を取り戻してゆく。
神崎 優
リラさんも当然、痛ましい姿ではなく見慣れたいつもの寝顔になっている。
それでも、いくら堕落の国とはいえ目の前で起きている出来事についていくのが精いっぱいだ。
カルセラ
「もう大丈夫でしょう」
リラ
自分の周囲で行われる奇跡に気付く気配もなく、すやすやと眠っている。
神崎 優
リラとカルセラと、緑のドラゴンに何度も目を移している。
GM
ドラゴンは、何度か同じようなことを繰り返しています。
神崎 優
「あ、ありがとうござい、ました」
神崎 優
カルセラとドラゴンの間あたりに礼を投げかける。
カルセラ
「私は何も……。
 それより、彼女を運ぶのを手伝って頂けませんか?」
神崎 優
「う……、あ、はい」
神崎 優
そう言われて返事をしたものの、手をわや、と出してみては引っ込める。
神崎 優
運んだことがない。運び方が全然わからない
神崎 優
すぐに思いついたのは、お姫様だっこみたいに抱える方法だったけど
ボクにされたくないだろうし、なにより一人で運ぶわけではない。
神崎 優
「あ、の、どうやって運べば……」
カルセラ
「……そうですね」
カルセラ
慣れていなさそうな優の様子を見て、リラの上半身を抱える。
カルセラ
「足を持ってください」
神崎 優
おっかなびっくり足を持つ。
足首あたりでいいんだろうかと力をこめる。
カルセラ
えっちらおっちら運んでいきます。
リラ
ブーツの足首を掴まれています。
神崎 優
えっちらおっちら、どう考えても疵の力で一人で運べるはずのリラさんを、あったばかりのカルセラさんと運んでいる。
GM
ドラゴンは満足したのか、その場から飛び去っていきました。
カルセラ
「そういえば、名前を聞いていませんでしたね」
カルセラ
えっちらおっちらしながら、優に。
神崎 優
「……神崎、優(かんざき すぐる)です」
神崎 優
「………」
カルセラの方をまっすぐ見ないで答える。
リラ
では、優が目を逸らしているところに
リラ
「……ん」
リラ
「んん……」
リラ
運ばれながら、かすかに身動ぎと小さな声。
カルセラ
「おや」
カルセラ
立ち止まる。
神崎 優
「……!」
リラ
身体の両端を二人に支えられた姿勢のまま、ゆっくりと瞼を上げます。
リラ
頭側をカルセラに、脚側を優に支えられている形ですから……
リラ
視界には優が映りますね。
リラ
「……あ」
リラ
今は怪我一つないその姿を認めて、ふわりと笑う。
リラ
「すぐる、くん……」
神崎 優
リラのお腹の右側の、地面あたりを見つめながら運んでいた。
リラ
視線が合うより先に、その顔を綻ばせていた。
神崎 優
名前を呼ばれ、一瞬目をリラの顔へと向ける。
いつもの笑顔がそこにあった。
リラ
目が合った。微笑む。
リラ
「よかった……」
神崎 優
「……ん。……おはよう」
リラ
「うん、おはよ」
リラ
「…………」
神崎 優
すぐに視線が外れる。
何を言えばいいかわからず、いつもの朝の挨拶を口にする。
リラ
あれ? 今……
カルセラ
「…………」
リラ
脚を、優くんが持っていて……
リラ
こっちは…………
カルセラ
「足を下ろして頂いても?」
リラ
「ひゃっ」
リラ
カルセラの方を見上げてあわわになります。
神崎 優
「あっ、はい」
リラ
「わ、え、えと」
神崎 優
慌てて降ろす。
リラ
暴れるわけにもいかず……大人しく降ろされ……
カルセラ
優がリラの足を下ろすと、そっと上半身を離した。
リラ
砂浜に腰を下ろしてから、ひょいと立ち上がります。
リラ
「……あれっ?」
リラ
今更気付いたけど、すごい元気……
リラ
優くんもだけど……痛いのなんにもなくて……
リラ
でも、優くんにその手の力のないことは知っているので……
リラ
二人を見回し。それからカルセラを見。
リラ
「……あなたが、助けてくだすったんですか?」
カルセラ
「一応は、そうなりますね」
カルセラ
「私はカルセラと申します」
カルセラ
簡単に、優を助けた経緯などを話します。
リラ
静かにその経緯を聞いています。
神崎 優
説明の間、さりげなくリラの後ろ側に立っている。
GM
少し離れたところでドラゴンがのしのし歩いていたので、その件についても話しました。
リラ
ひゃああ…………。
リラ
初めて見た……あんなの……
GM
ブレスを吐いて、植物を生やしたりしています。
リラ
あ、だからこのあたりの海はきれいなのかな……?
リラ
一通り説明をいただきまして。
リラ
「その、ありがとうございます。カルセラさん」
リラ
「救世主さん……なんでしょう? それなのに、助けていただいて……」
リラ
普通に考えたら……絶対期限延ばすために使われてるし……
リラ
っていうか……私達もボロボロの救世主見つけたらそうするし……
カルセラ
「私には、まだ余裕がありますから」
リラ
「……そうですか」
カルセラ
海の向こう、水平線へ視線を向ける。
リラ
まだ余裕があっても、その余裕を少しでも延ばすに越したことはないと。
リラ
幼い少女を手に掛けたことを思い出す。
神崎 優
「…………」
カルセラ
「ご存知ですか?
 この海岸に伝わるおとぎ話を」
リラ
「?」
神崎 優
「?」
リラ
ちらと優を見ますが、知らない同士ですね。まあまあ当然のことですが。
カルセラ
「霞の向こうから船が現れて、救世主を堕落の国から元の世界へと送り届けてくれる、んですって」
リラ
「え…………」
カルセラ
「噂を聞きつけて、救世主達がこの海岸を訪れるんです」
リラ
優を見る。
神崎 優
「……えっ?」
神崎 優
「それは……」
リラ
「…………」
神崎 優
「どういうこと、ですか?」
神崎 優
噂でしかない。
この世界で、そんな噂、本当のはずがない。
そんな思いと、こんな世界だからこそ、という思いが渦巻く。
カルセラ
「どういうことも何も、そういうおとぎ話があるだけですよ」
神崎 優
「……で、も、カルセラさんがここにいるなら……」
神崎 優
その噂が本当かどうかは確かめられるはずで。
リラ
「……実際に、救世主が帰るところを見たことがある……」
リラ
「とか、では、ないんでしょうか?」
カルセラ
「ええ、私は一度も見たことはありません」
リラ
確認のような。追い縋るような声音。
リラ
「…………」
カルセラ
「でも、噂はある」
神崎 優
「…………」
リラ
「おとぎ話……」
神崎 優
「そう、ですか……」
リラ
ちらちらと。優とカルセラとを窺っている。
カルセラ
「興味がおありで?」
神崎 優
降ってわいたおとぎ話のような噂に、いつもらしからぬ反応をしてしまった。
そして、それはあくまで噂であるという情報に、落胆していた。
リラ
「…………」
神崎 優
「……!」
神崎 優
一瞬顔をあげる。
リラ
わずかに俯いて、優の顔を窺う。
神崎 優
その視線は、ほんの一瞬でもリラではなくカルセラを見ている。
カルセラ
「どちらにしても、しばらくはここにいた方がいいと思いますよ」
リラ
「そ」
リラ
「それは、どうして……」
GM
ちょうどドラゴンが飛び去って、わずかばかり砂が舞う。
カルセラ
「ここは、あの亡者『ワンダーバッフェ』に支配されている領域です」
神崎 優
「亡者……?」
神崎 優
あれが?あのドラゴンが?
亡者?
リラ
飛び去ったドラゴンを見上げる。
カルセラ
「海岸から出ようとしたり、逆に海岸に近付こうとすると、ワンダーバッフェが襲いかかってくるんですよ」
カルセラ
「あなた達は、海を漂流してきたので見逃されたみたいですが」
リラ
「癒してくれる」
リラ
「だけでは、ないんですね……」
神崎 優
「じゃあ、なんであんな……」
カルセラ
「自由はありませんが、悪いものではありませんよ」
神崎 優
傷を治したり、植物を生やしたりなんてことを?
亡者のドラゴンが?なんのために?
神崎 優
わかるはずのない疑問を頭の中で呟いては消していく。
リラ
「…………」
リラ
「カルセラさんは、ずっとここで」
リラ
「噂を聞きつけて訪れた救世主と、裁判をして……?」
カルセラ
「そうですね」
カルセラ
救世主が領域に侵入しようとすると、ワンダーバッフェが倒してくれるので、その裁判に居合わせれば責務は果たせるので楽。
リラ
「……そう、ですか……」
カルセラ
他の亡者もワンダーバッフェが追い払ってくれるし、食べ物も豊富です。
神崎 優
「で、でも、じゃあなんでそんな、ここから元の世界に帰れるなんて噂が……」
カルセラ
「さぁ……」
神崎 優
そう、わかるわけがない。
わからないからこそ、噂がもしかすると本当かもしれないとすら思える。
リラ
ちらちらと優を窺っている。
神崎 優
「で、も、じゃあ、そうですよね……でもだから、噂も本当かもしれない」
リラ
うつむく。
カルセラ
「そうですね」
カルセラ
「ここに留まるにしても、出ていくにしても、もう少し休んだほうがいいでしょう」
カルセラ
「大きな怪我は治っていますが、体力や失った血までは戻りませんからね」
リラ
「……は、い」
神崎 優
「………はい」
リラ
「そうですね……」
リラ
「お世話になります」
リラ
カルセラへと頭を下げます。優の方を気にかけながら。
神崎 優
そう、出ていくにしても、噂を確かめるにしても。
体力を取り戻す必要がある。
神崎 優
ぶつぶつとなにか考え事をしているようで、リラが頭を下げているのを見て、あわせてて頭をさげた。
神崎 優
「……おねがいします」
カルセラ
「いえ、私も久しぶりに人と会話ができて、嬉しく思っています」
カルセラ
「ゆっくり休んでくださいね」
リラ
「……ありがとうございます」
神崎 優
「……ぁりがとうございます」
GM
というわけで、大体お茶会2Rの間くらいは休息する必要がありそうです。
GM
GM
PKのデータとクエストを公開します。
◆ クエスト:果実の収穫
条件:ワンダーバッフェの疵を抉る判定でのみ挑戦可能。
概要:ワンダーバッフェのブレスからは果実が生まれる。その出来たての果実にはことさらに滋養が詰まっている。手に入れることができれば裁判で有利となるだろう。
目標値:9
消滅条件:2回挑戦するか、お茶会終了と同時に消滅。
成功:挑戦したPCは果実を得る。「とうみつ」相当の効果を持つ。
失敗:同様に「とうみつ」を得られるが、ブレスを浴びてしまう。挑戦したPCは開廷時にランダムな不調(2ラウンド継続)を受ける。
放置:何も起こらない。
GM
クエストは1つのみです。
GM
GM
というわけで、教会に帰ってくると、カルセラが食事を用意してくれました。
GM
鸚鵡の卵のオムレツ。海ぶどうのスパゲッティ。椰子の実ジュース。
GM
堕落の国にしては豪勢な料理。
リラ
あ、あまりにも落ち着かない……
リラ
堕落の国で他人の、しかも救世主の善意を受けることは極稀。
リラ
を、通り越して、少なくとも二人で旅をするようになってからは皆無であった。
GM
温かく、味が濃く、栄養価の高い食事です。
神崎 優
いつもの食事に比べるとあまりにも豪華で、元の世界の食事と比べるとどうしても大人しい食事。
リラ
明らかに世慣れていない、か弱げな少年少女の救世主が二人ともなれば、まずは食い物にされるというのがセオリーで……
リラ
本当だったら裏を疑うところなのだけれど、
そもそもカルセラに下心があるのなら既に自分たちは生きていない。
リラ
ので、カルセラのことは信じていい、とは思っていますが……
神崎 優
そんな二人はあちこちで苦労し、生き延び、そしてここに流れ着いた。
神崎 優
だからこそ、いつもに比べて格段に上等な食事は本来心躍るはずのもの。
助けてくれたカルセラさんも、こうして食事を振舞ってくれるほどだし……。
リラ
カルセラに礼を言って、食事を摂る。
リラ
しかし会話は弾まない。
神崎 優
なにより、堕落の国のどこよりも、少なくとも二人で見てきたどこよりも安定した環境。
神崎 優
そんなところについたはずなのに、食事の雰囲気は重い。
リラ
いつもの食事とは比べ物にならないほどの味に、しかし舌鼓を打つ心の余裕もなく。
リラ
しかし、礼儀のように辛うじて言う。
リラ
「……おいしい、ですね。すごい」
リラ
「堕落の国で、こんな……」
リラ
「ありがとうございます」
カルセラ
「ワンダーバッフェがいますからね」
カルセラ
「気になさらないでください」
カルセラ
言葉通り、重苦しい雰囲気を気にしていない様子で食事を進める。
神崎 優
「…………」
リラ
「でも、私達をもてなしてくだすったのは」
リラ
「あの亡者ではなくあなたですから……」
カルセラ
「では、言い直しましょう」
カルセラ
「どういたしまして。 喜んでくださって嬉しいです」
リラ
「……はい」
リラ
心に重苦しいものを抱えながら、それでも顔には笑みを浮かべる。
神崎 優
時折ちらり、と会話を交わすリラとカルセラに視線をむける。
神崎 優
食事の席であまり感想を言わないのはいつものことだが、それでも輪をかけて、というか、あまり意識が食事に向いていない。
リラ
優が二人に視線を向けるのと同じように、リラも優の様子を窺う。
リラ
ただ気が塞いでいるだけなら、軽く声でもかけてみるところだが……。
神崎 優
うん、だのはい、だの。短い返答を挟みながら食べすすめていく。
リラ
今はその理由も、その心中も、少なからず察しがつく。
リラ
ただ場を明るくするだけで解決するものではないと、理解できてしまう。
神崎 優
神崎優の心は今完全に元の世界へ帰れるという噂の方を向いている。
リラ
知っている。何度も聞いてきた。元の世界へと帰りたいと、そのように零す声を。
神崎 優
思い出してしまった元の世界の、現代日本の食事をおもえば、どれほど豪華で上等な食事でも味気ない。
リラ
優がどれほどに自分の元いた世界に焦がれ続けているものか。
神崎 優
過酷で苦しい、血と砂埃にまみれたこの世界から帰れるかもしれない。
リラ
共に旅をし、共に死線を潜り抜ける最中で、痛いほどに知らされてきたのだ。
神崎 優
そのてがかりがもしかしたらあるかもしれない。
そんな些細なきっかけだけで充分だった。
リラ
その痛みは、優を庇うて敵の攻撃を受けるあの痛みとは比べ物にならず。
リラ
けれど、きっと、
リラ
……優の心の方が、ずっと痛い。
GM
優やリラが知っているかはさておき。
救世主が、堕落の国から元の世界に戻れる方法には様々な噂がある。
GM
棚井戸を最上階まで登れば、とか
嵐の日にさる山の頂上に行けば、とか
王立裁判所にそういう秘宝がある、とか。
GM
それらに到るのは容易ではない。
GM
しかし、船は待つだけだ。
神崎 優
霧の向こうから訪れる船に乗り込む。
ただそれだけ。
噂が本当なら、たったそれだけで。
リラ
それだけで、優は元の世界に帰ることができる。
神崎 優
「………ごちそうさまでした」
神崎 優
食後の挨拶。
神崎 優
「あの……食器とかは……」
リラ
黙々と食べていたぶん、優の方が完食が早かった。
カルセラ
「私が片付けますよ」
カルセラ
「お手伝いして頂けるのなら、そちらへ」
カルセラ
台所を示す。
リラ
慌てて……ではありつつも、失礼にならない程度に食事のスピードを早めます。
カルセラ
カルセラはまだ食べています。
神崎 優
自分の食器をまとめて台所へと運ぶ。
そんな行為にすら自宅のことを思い出している。
リラ
もくもくと食べます……おいしい……おいしいけど味わってる余裕は……今はあるのかもしれないけれど……。
カルセラ
味わっています。
リラ
でも。
リラ
優くんを一人にしたくないな、と思う。
神崎 優
別に家事を積極的にするわけでもなく、出された食事を食べて、せいぜい食器を運んだり、掃除をしたり洗濯をしたり。
自分からするでもなく、言われたら手伝う程度。
リラ
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
神崎 優
そんな記憶ですら懐かしいと思う。
カルセラ
「いえいえ」
リラ
カルセラに笑い返し。
リラ
「優くん、私も手伝いますよ」食器を運んで台所へと。
神崎 優
「………」
神崎 優
「うん、ありがと」
リラ
これは、元の世界でついた習慣ではなく。
この世界で身につけた生活の仕草。
リラ
リラは、この世界に適応している。
リラ
この堕落の国で生きていくための術を身に着け、そのように振る舞っている。
神崎 優
それでも、リラのことを邪険にすることも無視することもしない。
できない。
自分から進んでそうすると決めることもできない。
リラ
二人で台所に立ち、食器を洗った。
GM
GM
というわけでお茶会です。