◆ ラウンド2 リラ
リラ
*ワンダーバッフェの心の疵『ドレッドノート』を抉ります。
GM
6.教会の庭。背の低い草が風にそよいでいる。物干し台で乾されたシーツがたなびいている。
リラ
来たというか 見えた もうちょっとインターバル取ったほうがいいですか?
GM
どちらにしても、船はすぐに動くわけではないですからね。
リラ
いつものカルセラさんの生活の手伝いなどは済ませまして……
リラ
故郷を思わせる懐かしい響きは、よく耳に馴染んだ。
リラ
昼も夜もその音に包まれていると、まるでそれは子守唄のようで。
リラ
海の底のお城。大切に育てられた。愛してくれる人たちがいた。生活に不自由することは一切なかった。
リラ
この世界には恐ろしい人がいっぱいいて、怖いものがたくさんあって、本当ならその日暮らしにも苦労するほどで、
リラ
船が本当に来るとして。
あの亡者は訪れるものも、出ていくものも許さないと言うのなら。
リラ
それをどうにかするための手立てを、私は、調べたい。
ワンダーバッフェ
どこからともなく、ワンダーバッフェが降り立つ。
リラ
羽ばたきに揺れる髪を押さえながら、その姿を見上げる。
リラ
カルセラ。彼女の死産した子供だという、その亡者。
彼女のように穏やかで、恵みを与えることを惜しまぬ姿。
リラ
そのようになれたらと思う一方で、それが本質ではないことも知っている。
ワンダーバッフェ
教会の庭に生える、背の低い草の様子を見ている。
リラ
だからこそ、知らなければならないと思っている。
ワンダーバッフェ
草木に問題がなさそうだと判断すると、教会の方を見て、腰を下ろす。
リラ
その巨体をよく眺める。
自分は優ほどには鋭くはないけれど、何かを観察するのは苦手な方ではない。
ワンダーバッフェ
その背には、棘のように一本の剣が突き刺さっている。
リラ
あの日、振り下ろすことの叶わなかった短剣を思う。
リラ
*ワンダーバッフェの心の疵『ドレッドノート』を抉ります。愛で判定。
ワンダーバッフェ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
ワンダーバッフェ
2d6+2=>7 判定(+猟奇) (2D6+2>=7) > 11[5,6]+2 > 13 > 成功
リラ
2D6+4+2-6>=7 (2D6+4+2-6>=7) > 7[4,3]+4+2-6 > 7 > 成功
[ ワンダーバッフェ ] ドレッドノート : 0 → -1
[ リラ ] ティーセット : 1 → 0
ワンダーバッフェ
背中の剣に触れようとすると、体を起こす。
リラ
慌てて手を引っ込めます。そうだよね、よくないよね……
リラ
カルセラに向き直りつつ、ちらちらとワンダーバッフェの剣を気にかけています。
カルセラ
洗濯物を叩いて、長く渡した紐へ干してゆく。
カルセラ
「サラマンダーは、ワンダーバッフェを倒そうとして……」
カルセラ
「大した傷をつけることはできませんでしたが、あの剣だけが、突き立ったまま残っています」
リラ
ズボンを紐へとかけながら、ワンダーバッフェに突き立った剣を改めて見上げる。
カルセラ
「あの剣はドレッドノートという名で、心の疵の力がこもっているせいか、ずっと抜けずに突き刺さっています」
リラ
それはさぞかし痛かろうと思う。
自分はあの亡者をどうにかするために、こうしてそれを探ろうとしているのに。
リラ
ワンダーバッフェ。
不思議なブレスを吐き、荒れ野に生命を蔓延らせ、自分たちの傷すら癒したというあの亡者が。
リラ
自分だけは与えられず、救われぬままであることに心を寄せてしまう。
リラ
でも、同時に、大丈夫だとも思う。
与える者たるその姿を、羨ましく思うことはあれど。
リラ
私は決して、あの亡者にあこがれはしないのだ。
リラ
交わす言葉は少ないまま、カルセラと洗濯物を干していく。
カルセラ
「サラマンダーは、私の仲間だったんですよ」
カルセラ
「私を、この地獄のような世界でも、幸せにしてみせると」
リラ
布はきちんと張って、皺を作らないように紐へとかける。
洗濯物の干し方も、堕落の国に堕ちてから覚えたことだ。
カルセラ
「愛するということは、相手にとって必ずしも喜ばしいことではありません」
カルセラ
「故郷に恋人がいる女を強姦して、生まれた亡者を殺そうとする男の想い、ですよ」
リラ
謝罪で済むものでもないと気付いて、途中で呑み込む。
リラ
自分の干したシャツに皺が寄っていることに気づき、指先でそれを直す。
リラ
「顧みない想いというものが、害になる、というのは」
リラ
「だからって、応える義務なんて、ないでしょう?」
リラ
「なんにも言われていないなら、なおさらで……」
カルセラ
「あなた達は、もっと話し合った方がいいように思います」
カルセラ
「勝手に悪いように想像して、落ち込んで」
カルセラ
「それくらいなら、喧嘩のひとつでもしてみてはいかがです?」
カルセラ
「平手打ちのひとつでもしてやればいいでしょう」
リラ
「今の話、優くんにも当てはまるかもしれないけど」
リラ
「そんな横恋慕の女に刺し殺されるなんて、たまったものではないでしょう?」
カルセラ
「そうですね、何も言わないままというのは」
カルセラ
その奥で、しっぽの上に顎を預けるワンダーバッフェ。
リラ
ひとつ作業を終えた達成感を胸に、カルセラへと一礼して庭を去る。
リラ
与えられた二本の棒、地を歩くための脚で軽やかなステップを踏む。
◆ ラウンド2 神崎 優
GM
10.一瞬だけ自分は荒野に立っていることに気づく。瞬きすれば元通り。白日夢か、あるいは……
神崎 優
水平線を見つめながら、桟橋の縁に腰かける。
陸で過ごす支えとなる足は、今は海の上でぷらぷらとゆられている。
神崎 優
リラさんのなんてことないはずだった言葉につっかかって、まともに話をしなくなってから何日も経った。
神崎 優
噂は所詮噂に過ぎない。
本当に船が来たとしても、その船が元の世界に帰れるなにかとは限らない。
でも、本当に元の世界に帰れるかもしれないって、少しでも思ってしまった。
神崎 優
テレビもゲームもインターネットも、あれほど苦痛だった学校も、清潔な寝床もいつでも安全な水も―――
神崎 優
―――何もないのに与えてくれる両親も。
あれほど重苦しくて辛くて逃げ出したいと思っていた世界に、帰りたかった。
神崎 優
違う世界に来て、救世主で特別な力があるってわかった時は嬉しかった。
やっと何か特別になれるんだって思った。
神崎 優
でもそんなことはなかった。
救世主は特別でも、そんな特別な存在がたくさんいた。
この世界を救うのはボクじゃない、もっと特別な存在。
神崎 優
だからあっさりコインも奪われて。
そしてたまたま、むしろ、きっともっと邪悪な意図で、そのままに捨てられて。
神崎 優
傷を治してもらって、食料や水も分けてもらって。
それだけで充分なはずなのに。
神崎 優
だから、もっと強い救世主なんだと思ってた。
最初に出会った救世主のように、いつかどこかで、ボクが勘違いして、何かを期待して、決断したところで裏切られるんだって思ってた。
神崎 優
リラさんの話を聞いても特別なんだなとしか思えなかった。
神崎 優
だから、頼っていいと言われたら頼ってきた。
裁判になった時も、ほとんどリラさんにとどめをさしてもらった。
神崎 優
ボクが決めたことの、ボクが選んだことの、責任から逃げたかった。
神崎 優
ボクが頼って、頼んで、お願いして、求めて。
リラさんはそれにただ応えてくれて。
神崎 優
カルセラさんが言っていた、罪。
リラさんに押し付けたつもりになっていただけの、罪。
神崎 優
元の世界から逃げて、この世界からも逃げて。
この世界で犯した罪からも逃げて。
神崎 優
逃げてきた。
周りに勝手に理由を押し付けて。
神崎 優
だからせめて、この世界から逃げるにしても。
この世界での罪と向き合う時間は残っているはずなのに。
神崎 優
その一歩を踏み出すことすら決められないままでいる。
神崎 優
確かめないといけないこと。
言わなければならないこと。
神崎 優
不格好でも、ボク自身の言葉できちんと結ばないといけない、と思う。
神崎 優
一人でそんなことをぐるぐると考えていた。
リラ
波は絶え間なく岩を叩いては飛沫を上げる。
この教会で過ごすようになって、優の耳にも馴染み深くなったその音に。
神崎 優
「…………」
ここ数日の、避けてどこかに行くような様子はない。
リラ
静かながら迷いなく、まっすぐにあなたへと近づいてくるその音。
リラ
喉を震わす声が、震えていないことを祈りながら。
リラ
一度止めた足を再びに動かす。
石畳をこつこつと、すっかり身に付いた人真似で桟橋の上へ、
リラ
腰を下ろした。
あなたの隣――ではなく、背を向ける形で。
神崎 優
「……き、いておかないといけない、から」
リラ
話をしようとは言ったものの、横たわる沈黙は重く長い。
あの訣別以降、共同生活を送りながらもろくに話をせずに来たから。
リラ
カルセラに背を押され、話をしなければ、と思うたところで。
リラ
必死にかき集めたはずの勇気は、片端から泡と消えゆくようで。
リラ
「いいえ――これは、とてもとても、今更と言ってしまうほかないことですけれど」
リラ
「優くんと私にとっての、普通だとか、特別だとかって」
リラ
「どうしようもなく食い違っているものなんですよね」
神崎 優
それはきっと、ずっとそうだった。
生まれた世界も、今までの生活も、堕落の国にいた時間も。
何もかもが違う。
神崎 優
今までは口にしてこなかったことを、認める。
リラ
「堕落の国で言われる普通だって、また、ぜんぜん違いますものね」
神崎 優
「多分、物語の登場人物と、読者ぐらい違うよ」
リラ
「優くんの、そういうたとえが出てくるところ」
神崎 優
「だって、ボクとリラさんって、全然違うもんね」
リラ
「だから、私にとっては、ふつうじゃあありません」
神崎 優
「……うん、ボクにとってのリラさんも、そうだね」
神崎 優
「生まれも、育ちも、居た世界も、ボクからしたらふつうじゃない」
リラ
「あの海の底の暮らしが、ふつうだったのですけれど……」
神崎 優
「………ふつうじゃないから、とくべつだった?」
神崎 優
「ボクを助けたのも、ふつうじゃなかったから?」
リラ
「とくべつなんてものは、たくさんあるものじゃあありません」
リラ
この声は、伝えるべきと思ったことを、確かに伝えることができる。
リラ
故郷を思わせる澄んだ海の上で、人間の足をぷらぷらと揺らす。
神崎 優
言葉を遮り、耳をふさいで、逃げてしまえば、きっと苦しいことは起きない。
ショックは受けない。
神崎 優
逃げて、ただ待っているだけの、以前に元通り。
いろんなものを断ち切って。
ボク一人に。
神崎 優
「………リラさんにとって、とくべつ、だから……?」
神崎 優
決めることにも、判断にも自信が持てない。
ボクの言葉で確かめるのが精いっぱい。
リラ
少し、息を呑んで。
喉を空気が通り抜ける、
その音は波に掻き消されるほどにかすかだったけれど。
ワンダーバッフェ
* GMは横槍したくないけど、バッフェはドラゴンでよくわかんないです
ワンダーバッフェ
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
ワンダーバッフェ
2d6+2=>7 判定(+猟奇) (2D6+2>=7) > 8[5,3]+2 > 10 > 成功
神崎 優
2d6+4+2-6=>7 (2D6+4+2-6>=7) > 6[2,4]+4+2-6 > 6 > 失敗
[ ワンダーバッフェ ] HP : 22 → 21
[ 神崎 優 ] ティーセット : 1 → 0
神崎 優
ボクのことが特別で。
ボクのことが”あこがれ”で。
神崎 優
いつかの時に対峙した、救世主との裁判を思い出す。
神崎 優
『別の国だとか、別の世界だとか、行かないでっ……』
『いっしょに、いてほしくて……』
神崎 優
「そう言ってくれたことがすごく、嬉しい」
神崎 優
「ボクのことを、とくべつって言ってくれて」
神崎 優
心の底から、嬉しく思う。
リラさんの言葉にちゃんとボクの言葉で返すことができたことも。
神崎 優
「………ボクも、ちゃんと決めないといけない」
リラ
つきりと痛んで、
でも、なにかどうしようもないものが膨らむような感覚があって。
リラ
抑えられなくて、さりとて外に出してしまうこともおそろしくて。
リラ
必死に封じ込めながら、ただ、あなたの言葉のつぎを待つ。
神崎 優
「ボクがちゃんと決めて、リラさんに、ちゃんときかないといけないんだ」
神崎 優
「………ボクも、リラさんと一緒にいたい」
神崎 優
「ボクと一緒にボクの世界に来てほしいのかを」
神崎 優
「でも、ボクはまだ、どっちにするか決められない」
神崎 優
「リラさんだって、簡単に決められることじゃない」
リラ
その声の震えはいまだに止まず、
ただ引き留めるような、乞うような響きだけを覗かせて。
リラ
生い茂る葉のひとつが海面へと落ち、波に呑まれるさまを見ている。
神崎 優
「……だから、ごめんなさい。ボクはまだそれに応えられない」
神崎 優
選ばれるわけがないと思っていた。
それに足る人間じゃないと思っていた。
そんなボクを、ボクだから特別だって言ってくれたリラさんに。
リラ
顔を上げられない。
振り返ることも、今はできない。
神崎 優
ボクが、何も決断しないままでいることはできない。
その隣に立って、ボクもリラさんが特別だって。
まだ、言えない。
リラ
再び会話のなくなった港に、静かな波の音だけが響く。
神崎 優
「ボクも、リラさんのためなら、がんばれるよ」
神崎 優
ふふふ、と笑う声だけがリラの耳に届いた。
神崎 優
必要なことの全てとはいかず、
決断するべきことも先延ばしにして、
それでも、交わした言葉のすべてが幸せな一時。
神崎 優
二人が互いに、特別で。
どんな世界でも、どんな生まれでも、結んだ言葉が真実で。
神崎 優
今まで待つだけだった時が、今は少しでも流れなければいいのになんて思った。
◆ ラウンド2 PKの割り込み
GM
8.墓地。簡素な墓標が並んでいる。カルセラの作ったものだろうか。
GM
なんか……カルセラ墓地にいるので……リラちゃん来てくれたりしますか……?
GM
洗剤どこにあるかとかそういう感じのあれでいいので……
リラ
とりあえずカルセラさんが表でRPしてるとこに出るのがいいかな
GM
教会の裏手、すこしばかりじめりとした空気。
木製の墓標が並ぶ。
カルセラ
カルセラはショベルを持ち、何かを埋めていた。
カルセラ
盛り土からショベルで土を移動させ、また移動させ、そうして、かるく地面をならす。
カルセラ
手に付いた土を軽く払って、新しい墓を確認する。
リラ
墓標を眺むカルセラの耳へと、教会の方より、足音。
少年少女のうち、より軽やかに響く方のそれ。
リラ
「ありがとうございます」ぺこりと軽く頭を下げ。
リラ
「ひとつ、足のたてつけが悪くなっているものがあって」
リラ
「直すための、工具箱……? だとかって、どこかにありますか?」
カルセラ
地面を示す。 そこには確かに工具類の入った箱があった。
カルセラ
「救世主でしょうね。 ワンダーバッフェの爪痕が残っていました」
リラ
「普通にここを訪れたら、そうなるんですね……」
カルセラ
「……もしかすると、あなた達を襲った救世主かもしれませんね」
リラ
カルセラに言われ、ようやっと思い当たったように眉を上げて、
リラ
「最初から、歯牙にもかけていない様子でしたから……」
リラ
それが、彼らにとっては。この世界であれば。
間違っていないことも、よく理解している。
リラ
食い物にするもの。されるもの。
そこに正邪も善悪もない。
そのような淘汰を、この世界は間違いなく望んでいる。
リラ
兇刃を向けられた。恐ろしかった。
自分も優も、命を奪われる寸前だった。
リラ
彼らの持つ不死の魂が、次は健やかなる生を送ることの叶うように。
リラ
天の国を潜り抜けたその先で、うつくしいものを得られるように。
カルセラ
「死んでしまっては、名を名乗ることすらできない」
カルセラ
「彼らにも、彼らなりの名前や人生があったでしょうに」
リラ
「……悲しいことです。どうしてあげることもできない」
リラ
顔を上げて、月並みな言葉を吐きながら、自らの無力を改めて知る。
カルセラ
「魚の餌になるよりは、さみしくないでしょう」
カルセラ
余った板を横に片付けながら、工具箱を抱える。
リラ
「ずっと波に揉まれてばかりは、あんまりです」
カルセラ
「死体では、人魚と話すこともできませんしね」
カルセラ
「……話すと言えば、喧嘩はできましたか?」
リラ
小さい頃は、水夫さんたちが海の底まで遊びに来てくれることを夢想したりしたものだった。
それが叶わぬ夢であるも知らないで。
リラ
そんな思索に耽っていたところを、カルセラの言葉に引き戻される。
リラ
かも、とは言ったが。間違いなくそうではなかった。でも。
リラ
「カルセラさんのおかげです。ありがとうございます」
リラ
また頭を下げる。これも、この世界で教わったこと。
……というより、優を見ていて身についたもの。
GM
カルセラの言葉通り、水平線の向こうに見えた小さな影は、日に日に大きくなっている。
リラ
その影から、目をそらすことはできない。できるはずもない。
リラ
決めないといけない、と。
優に言われたばかりなのだから。
リラ
私ね、人間と同じ足が生えているのは、心の疵の力があるからなんだよ。
リラ
私ね、本当は喋ることだってできないんだよ。
本当は声もないの。舌を切り取られてしまったから。
リラ
こうして言葉が通じるのだって、きっと、心の疵によるもので。
リラ
……優くんは、私の身体と、心の疵の力のこと。
どこまで知って、どこまで考えて、ああ言ってくれたんだろう。
リラ
ほかの誰でもない私を選んで、この世界にいることを、決めてくれる?
カルセラ
「何も語らぬ、何も伝えられない女の話をしました」
カルセラ
「自分で何も考えずに相手に付き従うこと」
神崎 優
Choice[猟奇,才覚,愛] (choice[猟奇,才覚,愛]) > 猟奇
神崎 優
2d6+1=>7 (2D6+1>=7) > 7[4,3]+1 > 8 > 成功
神崎 優
1d6+2 (1D6+2) > 4[4]+2 > 6
[ 神崎 優 ] HP : 16 → 15
ワンダーバッフェ
2d6+4-6=>7 判定(+才覚) (2D6+4-6>=7) > 6[1,5]+4-6 > 4 > 失敗
[ 神崎 優 ] ヤリイカ : 1 → 0
[ ワンダーバッフェ ] HP : 21 → 20
カルセラ
カルセラは、前髪の奥からじっとリラを見る。
リラ
空白の脳内に適切なそれを見つけられないまま、
ただ波の間の沈黙に呑まれる。
神崎 優
二人の沈黙に、草木を踏み地面を駆ける足音が近づいてくる。
神崎 優
汗を流し息を切らしながら飛び込んでくる。
リラ
胸元に手が組み合わされる。祈るためではない。
リラ
張りつけられたようにその場に立ち尽くし、
波間に語らったあの時のように振り返ることもできないでいる。
神崎 優
息を切らせてリラさんを探していた。
ただ、その場にカルセラさんが居ることまで考えていなかった。
口から思わず声が漏れた。
神崎 優
呼吸を整える。海の底のような緊張感が漂っていることがわかる。
リラ
何事かカルセラに言い募るも、あいも変わらず言葉は形をなさないままに虚空へと消えゆく。
リラ
「既に十分、聞かせていただいていたと思いますので……」
神崎 優
漂っている緊張感も、リラさんの様子も、大丈夫とは思えない。
でもボクは何を話していたかもわからない。
リラ
その具体的な内容までは伝えられぬまま。
ただぎこちない笑みを唇にたたえている。
神崎 優
自分の言葉で何かを決心して、その一言目を発するのにはまだまだ慣れない。
ずっと慣れないかもしれない。
リラ
けれど、目の前の少女はあなたの言葉の次を促す。
あなたの言葉を待っている。
神崎 優
「まだ、ボクが確かめないと、いけないことを、言えてなくって……」
神崎 優
さっきは結局、全部リラさんに手を引かれるまましゃべっただけで。
ボクも確かめないといけないことがあったのにすっかり満足していた。
神崎 優
「リラさんと、話して、特別だって言ってくれたから、最初に聞こうと思ってたことと……」
リラ
はたと目を見開く。
胸元に握りしめた指に力がこもった。
神崎 優
「……さっき話してから、ちょっと考えたんだけど」
神崎 優
「ボクがどうしたいか決めるだけって、きっと、今までと一緒だと思う」
神崎 優
何かを決めることも、手を引いてもらうことも、すべてリラさんに委ねていた。
それはボクがそう望んだから、リラさんが”がんばって”いた。
神崎 優
それをボクが決めて、こうしたいってことに”がんばって”もらう。
それは今までと何も変わらない。
神崎 優
「ボクとリラさんは、ちがうから。だから、ボクは、リラさんがどう思ってて、何を考えてて……」
リラ
いらえは、すぐには返らない。
静寂は長く。懐かしき海の音が止まぬ時の流れを知らしめる。
リラ
「……殺さなきゃいけない相手に、ナイフを突き立てて」
神崎 優
リラさんを見る。
リラさんの言葉を聞く。
真っすぐに受け止める。
ボクの罪を。
リラ
喉がこわばる。舌がもつれる。
取り返しのつかない、境界線を超えようとしている。
リラ
この声があっても、伝えてはいけないものがあるのだと。
勝手に諦めて、自らを戒めてきたことを理解する。
神崎 優
目の前の特別な人の言葉を待つことは。
相手の言葉が途切れるのを待つのではなく、紡がれることを待つことは。
とても満ち足りた時間だ。
リラ
息を整える。
陸地での呼吸にはとっくに慣れきってしまったはずなのに、
どうしてだろう、うまくできないのは。
リラ
調子外れに上ずる声は、自分でも今まで聞いたことがないくらいに不格好で。
リラ
「それを望んでいたのは、そうしたかったの、は」
リラ
俯いて。顔を覆って。
身体と同じく細い声を震わせながら。
少女は調子外れに言い募る。
神崎 優
「……信じる、よ。それは、ボクにも、なんとなくわかってて」
リラ
ぐす、と鼻を鳴らす。
涙は落ちない。
人間ではないこの少女に、その機能はない。
神崎 優
「……そんなはずないって。ボクはそんな存在じゃない、って」
神崎 優
「……嫌になったら、離れていくだろうって思ってた」
神崎 優
「……リラさんのことも、ボク自身のことも、信じられなかったから」
神崎 優
リラさんから溢れる言葉。
ボクが本当に確かめるべきこと。
リラ
「こうして人の足で立っていられるのだって、この世界だけのこと」
リラ
「私、喋ることもできない、ただの人魚の女になってしまう……」
神崎 優
心の疵。
救世主の証。
それはこの堕落の国でのみ許された力。
ボクをボクとして。リラさんをリラさんとして。
あらしめる力。
リラ
「私のために、あなたの願いを挫きたくなんて、ない……」
リラ
「ずっと、帰りたいと言ってきたじゃあ、ありませんか」
リラ
「噂が本当なら、これ以上の機会はないんですよ」
神崎 優
「……ボクはね、ずっとこの世界から、逃げたかった」
神崎 優
「……いつも、何かを決めることからも、何かの責任からも、ボクが嫌なものから」
神崎 優
「ボクにとって、リラさんが、特別になっちゃったから」
神崎 優
その笑顔はぎこちなくて。
今のボクにできる精いっぱいの笑顔で。
リラ
墓地の石畳に両手をついて、横座りに両脚が投げ出された。
神崎 優
慌てて膝をつき、不安そうにおろおろと視線を走らせる。
リラ
困らせている。
案じてくれている。
その両方が、どうしようもなく苦しくて、
リラ
支離滅裂な言葉の裏に、本当に伝えたいことが呑み込まれる。
言わなければならないこと。伝えなければならないこと。
それをずっと、かろやかな言葉の裏に隠して誤魔化し続けてきたから。
リラ
それが堕落の国での生き方で、それにすっかり適応してしまったから。
こうして崩れてなお、あなたを無為に困らせる。
神崎 優
リラさんの言葉がボクの心をかき乱す。
涙が流せなくても、言葉にのった感情が耳を通じてボクに伝わる。
それはすべからく不確かで、ボクが勝手に感じている感情だとしても。
神崎 優
「……ボクは、人魚のお姫様じゃなくて、リラさんと一緒がいい」
リラ
「ほんとうは、ぜんぜん、明るい女なんかじゃない……」
神崎 優
その体を支える手を握る。
ボクの手が震えている。
それでも、しっかりと握る。
リラ
ゆっくりとその身体が傾いて、優の胸へと寄りかかる。
神崎 優
「ボクのことを、特別って言ってくれる、リラさんが、好きだから」
神崎 優
行き場をなくしたもう一方のうでを、ぎこちなくリラさんの背中に回す。
神崎 優
あの、海に飛び込んだ夜とは違う。
腕の中の存在を壊さないように、確かめるように、抱きしめる。
リラ
柔らかな曲線を描く背に、同じく柔らかな少年の腕が。
リラ
困らせたくない。罪悪感を抱かせたくない。
そう言っているのに、指先はその胸を縋る。
リラ
「歩くときだって、並べられた刃物を踏むようで」
リラ
私がただそう在るだけで、
我慢だってできないわけじゃなくて、
打ち明けられたとて、どうすることもできないことで。
リラ
伝える意味のないことだ。
伝える理由のないことだ。
伝える必要のないことだ。
神崎 優
人魚姫の物語。
ずっと昔に、見たんだっけ、読んだんだっけ。
作者の名前どころかそれすらも曖昧。
神崎 優
あらすじ程度しか覚えていなくて、悲しい恋の話だっけ。
最後に人魚姫は泡になって消えちゃうんだ。
本当に、この程度。
リラ
自らを物語の登場人物とも知らぬ少女は、
今は確かな熱を伴って、あなたの胸の中にある。
神崎 優
その物語を覚えていない少年は、
この熱を、温もりを、失いたくない。
神崎 優
「リラさんがつらいことも、苦しいことも、嫌だって思うことも」
神崎 優
「ボクは、リラさんを、誰よりも深く、愛してるよ」
リラ
「それだけで、この世界に、いる理由には……」
リラ
怯えたように身を竦ませながら。
胸を縋る指を解くことはできず。
リラ
「些細なことばかり気に病んで、変なことばっかり気にして」
リラ
「言わなくていいことだって、言ってしまうし」
神崎 優
「ボクのことを、特別って、言ってくれる」
神崎 優
「ボクには、リラさんしかいないよ。今、ここにいるのは、リラさんだけだよ」
リラ
顔は恥ずかしげなくその胸に埋めたまま、意味のない嗚咽を漏らす。
神崎 優
嗚咽に震える背中を、こわばる体を、震える手を。
離すまいと抱きしめる。
リラ
海は上手に泳げても、注がれる愛情には溺れるばかり。
リラ
一番に好きな男の人が、一番に私を選んでくれる、
リラ
心と魂のすべてでもって、私をとらえて離さないでくれる、
リラ
そんなこと、もはや叶わぬ願いだと思っていたのに。
GM
リラの故郷の音。 そして、優の世界にもあった音。
GM
水平線には、温かい我が家に帰るための船がいる。
神崎 優
あの日は、結局部屋までリラさんを運んだ。
神崎 優
リラさんに告白して、ボクにとって、あの船の意味はほとんどなくなった。
神崎 優
カルセラさんが言っていたように、その船を見ることが目的になった。
神崎 優
ボクはこの世界でリラさんと暮らす。
そう決めた。
神崎 優
あの日から、リラさんに告白してから、それはずっとボクの中にも響いている。
神崎 優
言葉を尽くして、手を取って。
伝え合って、伝わった想い。
リラ
あれから、元のように言葉を交わすようになって。
いいえ、元よりもずっと親密に。打ち明けてこなかったようなことも。
リラ
でも、だからこそ。
こうして穏やかな、何もない静寂をも楽しむ時がある。
リラ
開け放した窓より夜風に髪を靡かせながら、ぼんやりと暗色の海を眺めている。
リラ
あれほど文句を言ってみせて、駄々をこねてみせたところで。
それでもどうしたって、分かち合った愛には叶わない。
神崎 優
そんな姿を見ていると心が満たされていく。
愛という姿かたちのないものに満たされている。
リラ
すぐにあなたを振り返る。
薄色の髪が、電灯に照らされてほんのりと光っている。
神崎 優
ボクの視線はリラさんをまっすぐ見ることができずにいて、固く握りこんでしまっている手はじっとりと汗で濡れていて。
リラ
その心臓の音に重なるように、届く声は前よりどこかいとけない。
リラ
強情を剥がされて、内面を曝け出して。
以前のように、物わかりのよい少女として振る舞うのをやめてしまった。
神崎 優
ボクのために、ボクのことだけで、ボクのやりたいように。
そうじゃない、本当のリラさんと一緒にいられることが。
たまらなく嬉しくて。
リラ
ぱちりと目を瞬く。
湖の底の蒼い瞳が当惑に揺れる。
神崎 優
どう言うのが良いのかも、どうしたらいいのかもわからない。
ただ形のない愛を確かめる行為であるということはわかっている。
神崎 優
直接的な表現はなぜか言いたくなかった。
何かもっと特別なものだと思いたかった。
リラ
言葉をなぞる。少しばかり、意味を噛み砕くための一時を挟み。
リラ
それからようやっと、思い当たったように目を見開いた。
神崎 優
きっと、そんなことはないんだけど。
愛を確かめる行為は、特別なものだと思いたい。
リラ
それでも、優が決めたことだ。
……ちがう。決めたことだから従うのじゃなくて。
リラ
私を望むとを、決めてくれた。
それが何よりも嬉しいから。
リラ
詰まり詰まりの声は不格好で。
顔だってみっともなく茹だっていて。
これで失望されてしまったりとか、ないだろうかって、そんなことばっかり考えてしまう。
神崎 優
改めて言われると、愛の告白よりも何か恥ずかしい気がしてくる。
告白した愛を確かめ、深める行為。
リラ
椅子に浅く腰掛けた少女は、落ち着かない様子でつま先を宙に遊ばせている。
歩くことですら痛みの伴うその身体を、そこへと座らせたのもあなたのしたこと。
神崎 優
椅子に腰かけるリラさんに一歩ずつ近づく。
恥ずかしくて愛おしくて、正解がわからないままに。
リラ
その身体はぎこちなく強張っている。
想いを通じ合わせてより、あなたに抱き上げられることは何度もあったはずなのに。
神崎 優
熱が、緊張が、抱える腕に伝わる。
その体をそっと、ベッドに横たえる。
リラ
息を詰めて、しかしその瞳に宿るものは怯えではなく。
神崎 優
きっと、ボクの熱も、緊張も、伝わってしまっている。
神崎 優
横たえたリラさんの瞳の熱がボクをくすぐる。
そんな瞳を見つめ返す。
神崎 優
リラさんの瞳に反射するボクが映るように、ボクの瞳にもリラさんが映っている。
リラ
そしてその唇は、あなたの名をなぞってみせる。
リラ
肩に不格好な力が入る。
指先がシーツを手繰って、皺を作る。
リラ
次にはおそるおそるに伸ばされて、優の背へと回った。
GM
人魚姫の握りしめたシーツの海に、少年が揺蕩う。
GM
今となってはもはや、無意味な船の影はどんどん大きくなり。
GM
今は廃墟となっている港へと、入ろうとしていました。
GM
あなた達とカルセラは、港までやってきました。
神崎 優
今はもう無意味になってしまった、噂の船をまじまじと見上げる。
リラ
帰らないと優が決めたとは言え、その存在が気がかりであることは変わりがなく。
物憂げな視線を船へと向けている。
リラ
優も心からそうなのだと、今は確信できている。
リラ
「あの亡者は、それを見逃してくれはしませんよね」
神崎 優
「……じゃあ、ボクたちが、ここで暮らしたい、って、言ったら……?」
リラ
おろおろと視線を彷徨わせ。
優を向き。カルセラを向き。優を向き。
カルセラ
「あなた達の選択を、私は美しいものだと思います」
ワンダーバッフェ
頭上から、ワンダーバッフェが舞い降りてきた。
リラ
カルセラから、一歩引く。優の手を握りしめる。
カルセラ
「この世界は堕落の国。 ここに幸せなどはありません」
カルセラ
「楽園のように見えるこの場所も、ワンダーバッフェより強い救世主が訪れれば壊れるような脆い存在です」
カルセラ
「この世界にしあわせなどは無いのだから」
カルセラ
「思いが美しいうちに、手に手を取って果てなさい」
神崎 優
響く波の音は変わらない。
そのはずなのに、この場にはあれほど忌避していた空気が瞬く間に広がっている。
リラ
張り詰め冷え切った空気。
親切にしてくれたはずの救世主から向けられる、明確な殺意。
カルセラ
「殺し合うのが、もとよりこの国の定めでしょう」
神崎 優
生と死と、判決をもたらす裁判。
堕落の国の、この世界では普通なこと。
リラ
その普通から二人遠ざけられて、随分な時を過ごしたような気がする。
けれどそんなことは一切ない。未だ三十日も経っていない。
リラ
そして、もし三十日を迎えるより前に、他の救世主が訪れることがなければ。
カルセラ
「さあ、法を投げ捨て、凶器を振るい、敵を斬り伏せ」
ワンダーバッフェ
ワンダーバッフェが鎌首をもたげ、救世主達へと翠色のブレスを吐きかける。それは何かを癒やす時とは違う、悲しい心の疵の力が作用していた。
リラ
「……っ!」
優を庇う暇もない。二人揃ってブレスを浴びせられる。
神崎 優
立ちこめる裁判の空気にも、浴びせかけられるドラゴンのブレスも。
かつてのボクを折るには充分で。
神崎 優
でも、しっかりとつながった手を握り返す。
神崎 優
痛みの恐怖も、死の恐怖も。
繋ぐ愛する人のためなら呑み込める。
リラ
この手を引いてくれる人がいるから。
他ならぬ私を選び、しんじつの愛とさいわいを捧げてくれる人が、
リラ
――ずっと求めていた、あこがれをくれる人がいるから。
リラ
私は、真実、私の意思で。
この裁判を、戦える。